相続・遺言分野に関する他の資格者との違い


  相続や遺言の相談を受けている資格者は、弁護士、司法書士、行政書士など複数存在していますが、資格者間の違いがよく分からない方も多いと思います。そこで、以下に、相続遺言分野に関する弁護士と司法書士・行政書士との違いをまとめましたので参考にしてください。

 

相 談 内 容 弁護士 司法書士 行政書士
遺言書作成の相談  ×※
遺産分割協議書作成の相談
遺産分割調停申立書等の作成の相談   △ ×
遺産分割協議や遺留分侵害額請求における代理交渉・請求や交渉・請求の為の相談 ×
遺産分割調停・審判や遺留分侵害額請求調停における代理とその為の相談 × ×
遺言無効確認請求や遺留分侵害額請求、不当利得返還請求等の訴訟手続における代理とその為の相談 ×

遺言書作成の相談

 

相 談 内 容 弁護士 司法書士 行政書士
遺言書作成の相談  ×※

 司法書士は、遺言書作成のための相談を行う権限を認める根拠となる規定がありません。

※もっとも、現実には、多くの司法書士が相談に応じているようですが、お客様の代理人として交渉や裁判所の調停手続、裁判手続で紛争を解決することを主たる業務としている弁護士と比べると、相続発生後の様々な紛争発生リスクやその対処を想定した助言までは難しいと思います(もちろん個々の司法書士の知識や経験、助言力にもよるでしょう)。

 

 行政書士は、遺言書の作成のための相談に関して、依頼の趣旨に沿って、どのような種類の書類を作成するか、書類にはどのような事項を記入するかといった事項についての作成や作成のための相談ができるだけで、高度な法律的判断が含まれる遺言書の作成やその作成のための相談を行うことはできません。

 

 遺言書は、遺言者の意思を反映させたり、相続の際に相続人間での紛争を避けたりするために作成するものです。そのため、遺言書の作成を考えている方は、遺言書がない場合や遺言書の記載が不適切不明確である場合に生じる紛争を普段から取り扱っている専門家である弁護士に相談するのが望ましいと考えます。弁護士は、代理人としての紛争解決の経験を踏まえつつ、高度な法律的判断に基づいて適切な助言を行えます。


遺産分割協議書作成の相談

 

相 談 内 容 弁護士 司法書士 行政書士
遺産分割協議書作成の相談

 司法書士は、相続登記手続の場面における「法務局又は地方法務局に提出し、又は提出する書類」の附属書類としてであれば遺産分割協議書を作成可能であり、その作成のための相談であれば相談可能です。しかし司法書士は、遺産分割協議書の作成やその作成のための相談に関して、依頼の趣旨に沿って、どのような種類を作成するか、書類にはどのような事項を記入するかといった事項についての作成や相談ができるだけで、高度な法律的判断が含まれる遺産分割協議書の作成やその作成のための相談を行うことはできません。

 

 行政書士は、遺産分割協議書の作成やその作成のための相談に関して、司法書士と同じく、依頼の趣旨に沿って、どのような種類の書類を作成するか、書類にはどのような事項を記入するかといった事項についての作成や相談ができるだけで、やはり、高度な法律的判断が含まれる遺産分割協議書の作成やその作成のための相談を行うことはできません。

 

 そもそも、遺産分割協議書は、全ての相続人が遺産の分割について合意した事項を記載する書面ですが、通常はその作成に先立って、他の相続人と交渉して合意しておくことが不可欠です。そして、その交渉を行う代理権限が与えられているのは弁護士だけです。

 また、遺産分割協議書は、その作成により遺産の分割を完了させ、後日の紛争を防止する役割が期待されています。そこで、そのため作成にあたっては、遺産分割に関する紛争を日常的に取り扱っている専門家が、その紛争処理の経験を踏まえつつ、将来の紛争予防のための適切なアドバイスを行う必要があります。このような高度な法律的な判断に基づく適切なアドバイスを行うことができるのは、弁護士だけです。

 


遺産分割調停申立書等の作成の相談

 

相 談 内 容 弁護士 司法書士 行政書士
遺産分割調停申立書等の作成の相談   △ ×

 司法書士は、遺産分割調停申立書等の裁判所提出書類の作成やその作成のための相談のいずれについても行うことができます。

 しかし、司法書士は、遺産分割調停申立書等の裁判所提出書類の作成やそのための相談に関して、依頼の趣旨に沿って、どのような種類の書類を作成するか、書類にはどのような事項を記入するかといった事項についての作成や相談ができるだけで、高度な法律的な判断が含まれる遺産分割調停申立書等の裁判所提出書類の作成やその作成のための相談を行うことはできません。

 

 行政書士は、遺産分割調停申立書等の裁判所提出書類の作成やその作成のための相談を行うことはできません。

 

 遺産分割調停申立書等の裁判所提出書類やそれに添付する証拠資料は、裁判所において紛争を解決するための土台となる書類ですので、書面の作成や証拠資料の取捨選択においては、高度な法律的判断に基づいた作成や判断が必要になります。

 このような高度な法律的判断に基づく遺産分割調停申立書等の作成とその作成のための相談をすることができるのは、遺産分割に関する紛争を日常的に取り扱っている弁護士だけです。


遺産分割協議や遺留分侵害額請求における

代理交渉・請求や交渉・請求の為の相談

 

相 談 内 容 弁護士 司法書士 行政書士

遺産分割協議や遺留分侵害額請求における代理交渉・請求や交渉・請求の為の相談

×

 弁護士は、法律事務全般を扱うことができ、その権限についての制限もありませんので、遺産分割・遺留分侵害額請求のいずれの場面においても、依頼者である相続人の代理人とてして相手方に対して交渉・請求を行うことができますし、相手方と交渉・請求するための相談を受けることもできます。

 

 司法書士は、原則として、相続人の代理人として交渉・請求を行うことはできませんし、交渉・請求のための相談を行うこともできません(ただし、能力担保研修を経て簡裁訴訟代理権等を付与された「認定司法書士」に限っては、「請求金額が140万円を超えない遺留分侵害額請求」を行う場面に限り、代理人として交渉・請求を行うこと、交渉・請求のための相談を行うことができます。)。

 

 行政書士は、遺産分割において相続人の代理人として交渉・請求を行うことはできませんし、交渉・請求するための相談を行うこともできません。

 


遺産分割調停・審判や遺留分侵害額請求

における代理とその為の相談

 

相 談 内 容 弁護士 司法書士 行政書士

遺産分割調停・審判や遺留分侵害額請求調停

における代理とその為の相談

× ×

 弁護士は、法律事務全般を扱うことができ、その権限についての制限もありませんので、遺産分割調停・審判、遺留分侵害額請求調停の家庭裁判所にて行われる手続において、依頼者である相続人の代理人として調停期日や審判期日に出頭することができ,その為の相談を行ったりすることもできます。

 

 司法書士、行政書士は、いずれも家庭裁判所における代理権限を有さないため、一方当事者の代理人として活動したり、その代理人として活動するための相談を行ったりすることはできません。


遺言無効確認請求や遺留分侵害額請求等の訴訟

における代理とその為の相談

 

相 談 内 容 弁護士 司法書士 行政書士

遺言無効確認請求や遺留分侵害額請求、不当利得返還請求訴訟等の訴訟手続における代理とその為の相談

×

 弁護士は、法律事務全般を取り扱うことができ、その権限についての制限もありませんので、「遺言が無効であることの確認を求める訴訟」や「遺留分侵害額請求訴訟」等の訴訟手続において、一方当事者の代理人として活動したり、その活動のための相談を行ったりすることができます。遺産分割に先立って解決しなければならない「遺産の範囲の確認を求める訴訟」や「不当利得返還請求訴訟」も同様です。

 

 司法書士は、原則として、相続人の代理人として交渉・請求を行うことはできませんし、交渉・請求のための相談を行うこともできません。能力担保研修を経て簡裁訴訟代理権等を付与された「認定司法書士」に限っては、「簡易裁判所における請求額が140万円を超えない紛争」の場面に限り、代理人として訴訟手続を行うことは可能ですが、地方裁判所での代理権限はありません。

 

 行政書士は、簡易裁判所、地方裁判所のいずれの裁判所でも代理権限を有さないため、一方当事者の代理人として活動したり、その活動のための相談を行ったりすることはできません。